はじめに
Google検索広告は、その他の広告手段(SNS広告、ディスプレイ広告など)が『潜在顧客』に訴求するのに対し、今まさにその商品やサービスを求めて検索活動をしている『顕在顧客』に訴求するため、最も『結果を出せる』効率的なデジタル広告チャネルとされており、実際に今でもその地位は確かです。
しかし昨今、実際の広告運用の現場では、「クリックされない」「広告経由の購入が減っている」「ターゲティングが効かない」といった声が目立つようになっています。
これは単なる広告運用の失敗ではなく、広告の前提そのものが変わってしまったことに起因します。
本記事では、検索広告が直面している6つの変化と課題を、「なぜそれが起きているのか」という視点から深掘りしていきます。
① AI(SGE)の台頭により、検索行動が変わってしまった
これまでのGoogle検索は、「検索ワードに対する答え」を広告やWebサイトから探すプロセスでした。
しかし2023年以降、Googleは「SGE(Search Generative Experience)」というAIによる検索結果要約を導入。
これにより、検索結果ページの最上部にAIによる“回答”が表示されるようになりました。
この変化によって、ユーザーは広告をクリックするまでもなく、AIの答えだけで満足して離脱するケースが増加しました。
特に、比較・定義・How-toなど、従来は広告の強みだったキーワード群がAIに代替され、検索広告の露出自体が減少する傾向にあります。
② ユーザーの広告リテラシーが高まり、「広告は避けるもの」になった
「検索結果の上位に出ている=信頼できる」という感覚をお持ちのユーザーはすでに少数派でしょう。今のユーザーは「広告であること」を簡単に見抜きます。
特にスマホネイティブ世代やZ世代は、検索結果の「広告」ラベルを目にした時点で、あえてそれを避ける傾向があります。
背景には、日常的に大量の広告に触れてきたことでの“広告疲れ”、そして「広告=売り込み」「操作される」という警戒心があります。
このような状況では、広告であることが明示されているリンクは、自動的にクリック対象から除外されるという現象が起きています。
③ ユーザーの購買行動が「即決」から「比較検討重視」へ変化した
Google検索広告は「検索→クリック→購入」というシンプルなコンバージョン導線を想定して設計されてきました。
しかし現在、多くのユーザーは購入までに複数のメディア・チャネルを跨いで情報を収集・比較します。
たとえばある商材に興味を持っても、即購入には至らず、YouTubeでレビューを見たり、SNSで評判を確認したり、Amazonで価格を比較するなど、
“行ったり来たり”の購買行動が主流になっています。
このような「非線形の意思決定プロセス」においては、検索広告がそのままCVに直結することが難しくなっているのです。
④ スマホ検索のUI変化によって、広告がスクロール圏外になっている
現在、検索行動の約70%以上はスマートフォンで行われています。
そしてこのスマホ検索のUIは、広告表示にとって厳しい環境になっています。
たとえば、「地図(ローカルパック)」「画像カルーセル」「FAQスニペット」「レビュー」などのリッチリザルトが検索結果の上位に並ぶことで、
広告がスクロールしなければ見えない位置まで押し下げられているケースが頻発しています。
つまり、広告が表示されていても「視認されていない」状況が生まれており、「広告が無視される」のではなく、広告に到達しない構造になってしまっているのです。
⑤ 認知されていないブランドは、検索広告でも無視される
検索広告は「誰にでも平等に機会を与えるツール」とされてきました。
しかし実際には、ブランドの認知度によって、クリック率が大きく左右されるようになっています。
たとえば検索結果に複数の広告が並んでいても、「聞いたことのある企業」や「知っているロゴ」の広告だけがクリックされ、
無名の企業の広告はスルーされてしまう――これは心理的な“認知バイアス”によるものです。
検索広告が「比較の場」になっている今、無名ブランドは“比較の土俵にすら乗れない”という現象が起きており、広告としての機能を果たせなくなりつつあります。
⑥ Cookie規制により、ユーザー行動の追跡が困難になっている
従来、Google検索広告の運用は、サードパーティCookieを使ったリマーケティングやアトリビューション分析に大きく依存していました。
しかし現在、AppleのSafariやFirefoxではすでにCookie規制が強化され、Google Chromeも2025年にはサードパーティCookieを完全廃止予定です。
この動きにより、ユーザーの行動履歴が追えなくなり、
・どの広告が効果的だったのかが見えなくなる
・一度サイトを訪れたユーザーへの再アプローチが難しくなる
といった「計測の限界」に直面しています。
この結果、広告効果の可視化・最適化・予算配分が曖昧になり、運用自体の根幹が揺らいでいる状況です。
まとめ|広告の本質が問われる時代へ
これら6つの変化は、いずれも「Google検索広告が終わった」という話ではありません。
むしろ、広告の前提が変わったことを意味しています。
これからの広告は、「出せば売れる」ものではなく、「関係性をつくる入口」として機能させる設計が求められます。
検索広告の効果が下がっているのではなく、使い方と文脈が変わっているのです。
私たち広告主やマーケターは、その変化を読み取り、設計思想そのものをアップデートしていく必要があります。